テーマも GPL ライセンス

以下は、2009年7月2日に書かれた WordPress.org 公式ブログの記事、「Themes are GPL, too」を訳したものです。本文内のリンク先はすべて英語ページです。


もし WordPress がひとつの国家だったなら、その権利章典は GPL ライセンス になるでしょう。なぜなら、GPL は私たちの基本的な自由を保護してくれるからです。

WordPress.org をクリーンに保ち、WordPress のライセンスに完全に準拠していて法的に問題ないものだけを推進するよう、私たちはいつも最善を尽くしてきました。しかし、しばらくコミュニティにおいて、テーマにも(我々がいつも当然だと考えていたとおり) GPL が適用されるのかどうかという疑問がありました。

この点をはっきりさせるため、僕は世界的に秀でた GPL の専門であるソフトウェア・フリーダム・ロー・センターに連絡しました。彼らは WordPress のコードとコミュニティをじっくり見て、公式な法的意見を提供してくれました。一言でいうとこうです、「WordPress テーマの PHP コードは GPL でなければならないが、画像や CSS は GPL でもそうでなくてもよい」。

マットさんへ

ソフトウェア・フリーダム・ロー・センターに WordPress(PHP で書かれた GNU GPL v2 ライセンスの CMS)の派生物としてのテーマの状況を明確にするためにご連絡いただきました。

https://wordpress.org/wordpress-2.8-RC1.tar.gz にて提供された WordPress 2.8 リリース候補版1(RC1)について、詳しい調査を行いました。この リリース候補版に同梱されている “classic” および “default” テーマは、さまざまな PHP、CSS ファイル、そして任意に仕様できる画像ファイルのディレクトリを含んでいます。PHP ファイルには HTML マークアップと WordPress 関数への PHP コールがあわせて含まれています。PHP コードにはループや条件文などのロジックもいくつかあります。

WordPress は起動ののち、テーマが利用するための情報を用意する各種ルーチンを実行します。通常的な利用の場合、この後コントロールが PHP の include() 関数によってテーマパッケージファイル内の HTML・PHP テンプレートへ転送されます。これらのテンプレートファイルの PHP コードは、クライアントへ渡すテンプレートを埋めるためにはじめに用意された情報に依存しています。

このバージョンの WordPress に基づいて考え、またこれらのテーマがサードパーティによって WordPress に追加されたことを考慮すると、私たちは「提示されたテーマやそれに大部分が似ているテーマは、WordPress ソフトウェアの派生物とみなされる要素およびそうではない作品を含んでいる」という意見です。特に、CSS ファイルや “default” テーマの画像ディレクトリに含まれるものは、WordPress コードとは分離しているといえるでしょう。一方、WordPress のコードと混じり合って影響を受ける PHP や HTML コードは、WordPress の派生物といえます。

WordPress テーマにおいて、CSS ファイルと画像は Web サーバーから純粋なるデータとして提供されます。WordPress 自体はこれらのファイルを無視 [1] します。CSS や画像ファイルは純粋なデータとしてサーバーによって読み込まれ、 そのままユーザーに送信されており、WordPress インスタンスをまったく通過しません。CSS や画像は 容易に広範な HTML ドキュメントによって使用する事ができ、WordPress とまったく関係がないさまざまなソフトウェアが読み込んだり表示したりできます。このことから、これらのファイルは WordPress コードとは別の作品です。

PHP 要素をひとまとめにして考えると、これらは明確な WordPress の派生物です。テンプレートは include() 関数によって読み込まれます。コンテンツは PHP スパース配列 が処理するために、WordPress の他の部分とともに(また、完全に他と見分けのつかない形で)メモリ内の WordPress コードと組み合わされます。PHP コードは多くの WordPress 関数およびスパースへのコールと、アクセスする WordPress 関数 やその回数を指定する最小限のロジックとコントロールから成り立っています。これらは WordPress の派生物です。なぜなら、すべての部分が呼び出される WordPress 関数によって定義されているからです。PHP テンプレートは著作品としてWordPress と組み合わせ、さらに拡張するためだけに設計されています。

提示された2つのテーマでは、HTML 要素が PHP と混じり合っています。テーマを通じて PHPファイル に散りばめられたこれらの HTML スニペットは、PHP コードに非常に依存性の高い形態のデータを作成するため、その派生物といえます。

結論として、提示された WordPress テーマは WordPress の著作権の元にあるコードの派生物を含んでいます。それぞれ独自の作品である画像、CSS、PHP ファイルをまとめたこれらのテーマは、全体的を GPL ライセンスにする必要はありません。むしろ、PHP ファイルは GPL ライセンスの要件に制約されるが、画像や CSS はそうではないと言えます。サードパーティのテーマ開発者は、希望するなら制限付きの著作権を適用することができます。

最後に、WordPress の著作権に制限されない合法な WordPress テーマを作成することも可能ということを言っておきます。しかしそのようなテーマはこのソフトを有益なものにしている WordPress 関数をまったく使わないものである必要があります。

敬具
ジェームス・ヴァスリー
ソフトウェア・フリーダム・ロー・センター

[1] ひとつだけ例外があります。WordPress は管理画面のテンプレート選択機能でプレビューを作成する際に CSS および画像ファイルを使用しています。しかしこのケースでも、CSS・画像ファイルは WordPress 関数を呼び出すことはなく、PHP コマンドとして扱われたり、その他の WordPress データ構造を改変することはありません。これらのファイルはデータとして読み込まれ、画像を作成し、ミニチュア版の Web ページをユーザーに表示するだけです。

画像や CSS が GPL であることは法的には必須ではありませんが、これらがなければかなりテーマに制限ができてしまいます。CSS や JavaScript のまったくない WordPress を想像できますか?この理由により、WordPress.org では今まで通り 100% GPL ライセンスであるか、GPL に互換性のあるライセンスのものだけをホスティングします。100% GPL テーマを作成し、それに関わるサポートやサービスを提供している人たちをたたえるため、GPL 商用サポートテーマを紹介する新しいページを公開しました。