WordPress 2.5

以下は、2008年3月29日に書かれた WordPress.org 公式ブログの記事、「WordPress 2.5」を訳したものです。


6ヶ月間のコミュニティによる努力が、WordPress 2.5 というすばらしい成果になりました。バージョン 2.5 の数えきれないほどある改善点は、ほぼすべてが皆さんのフィードバックによるものです。例えば、複数ファイルアップロード、プラグインの簡単アップグレード、ビルトインギャラリー、カスタマイズ可能なダッシュボード、パスワードの salt 使用および Cookie の暗号化、メディアライブラリー、コードに干渉しないリッチテキストエディター、同時編集保護、フルスクリーンの投稿画面、投稿記事およびページ検索機能などです。

簡潔な機能の説明をお読みになりたい方には当ブログの「WordPress 2.5 公開前の機能紹介」が、スクリーンショットをご覧になりたい方には同記事の英語版が最適です。または、スクリーンキャストについての記事もいいでしょう。早速新バージョンを触ってみたいという方のためには、こちらのページにダウンロード情報があります(訳注: リンクは英語版。日本語版は少々お待ちください)。

WordPress 2.5 についてすべて知り尽くしたい!という方は、コーヒーかカクテルでも一杯ご用意ください。この記事はかなりの大作ですので…。

ユーザー向け機能

スピードアップ&すっきりと整理されたダッシュボード — ダッシュボードで何が一番重要かについて皆さんのフィードバックを聞き、ブログ管理に最も必要な作業に集中できるように管理画面をを整理することに力を注ぎました。Happy Cog、そしてコミュニティとのコラボレーションにより、1.5 以来最も大きなインターフェース面での前進をすることができました。

ダッシュボードウィジェット — 新しいダッシュボードのホームページには、各種ウィジェットが表示されるようになりました。これらのウィジェットには、投稿関連の統計情報・コメント・被リンク・最新プラグイン情報、WordPress 関連ニュースなどを表示するものが含まれています。ダッシュボードウィジェットは、例えばWordPress 関連ニュースのかわりに自分の住む地域の新聞社のフィードを表示させるなどのカスタマイズをすることもできます。また、プラグインをフックすることもできます。例えば、WordPress.com stats ウィジェット日本語版はこちら)を入れると、統計情報を表示する便利なボックスが追加されます。

進行状況が分かる複数ファイルアップロード — いままでは大きなファイルをアップロードする際、どれだけ時間がかかるか分からないまま、じっと待つだけしかできませんでした。また、一度に1ファイルしかアップロードできなかったため、複数のファイルをアップロードするにはかなりの根気が必要でした。これからは、画像や音声・動画など、複数のファイルを含むフォルダを選択するだけでまとめてアップロードができる上、それぞれの進行状況を見る事もできるようになりました。

おまけ: EXIF 情報の抽出 — カメラの種類、絞り、シャッタースピード、ISO などの EXIF メタ情報を持つ JPEG ファイルをアップロードすると、WordPress はこれらのデータを抽出してカスタムフィールドに挿入し、テンプレートで利用する事ができます。その他の似たような情報がある場合は、WordPress の対応するフィールドに振り分けられます。最近のデジタルカメラのほとんどは EXIF データを生成するようになっています。

投稿記事およびページ検索機能 — これまでは投稿記事のみしか検索ができませんでしたが、個別ページも含めた検索ができるようになりました。これは WordPress を CMS として利用するにはとてもいい機能です。新しいテーマでは、検索結果で個別ページに特別なスタイルを加える事もできるようにならいました。

タグ管理 — タグの追加、名称変更、削除がプラグインを使わずにできるようになりました。

パスワード強度チェック — プロフィールページでパスワードを変更する際、選んだパスワードの強度をチェックします。

同時編集保護 — 複数の投稿者がいるブログで、他の人が編集中の投稿を開き、自動保存機能でお互いの変更を繰り返し上書きしてしまい、何時間もかけた文章をなくしてしまった事はありませんか?きっと普段は使わないような言葉が口から出てきてしまった事でしょう…。新バージョンでは他の人が編集している投稿の編集画面を開くと、最初に編集を始めた人が編集終了まで他の人が保存できないよう、投稿をロックするようになりました。その場合、メッセージが表示されます。

プラグインの簡単アップグレード — お使いのプラグインが公式プラグインレポジトリに登録されている場合、2.3 以降のバージョンではアップグレード通知が表示されるようになっていました。今回はそれをさらに次のステップへ進め、新しいプラグインのダウンロードとインストールも行えるようにしました。これはサーバー環境にいくらか左右されますが、OS X や Windows がソフトウェアのアップグレードの際にパスワードを必要とするように、FTP パスワードを聞かれることがあるかもしれません。私たちがテストを行った多くのサーバー環境ではだいたい大丈夫なようですが、あなたの場合は違うという事もあるかもしれません。

使いやすいリッチテキストエディター — この改善点をうまく説明するにはどう言えばいいのかよく分からないのですが、「リッチテキストエディターがコードと干渉しなくなった」といったところでしょう。今回私たちは TinyMCE のバージョン3.0を取り入れました。このバージョンでは、Safari への対応が今までよりも良くなり、複雑な HMTL コードの扱いが改善されています。また、ブラウザ向けの Writeroom のような「フルスクリーンモード」も追加されました。

ビルトインギャラリー — 複数ファイルアップロードを最大限に活用して大量の写真をアップロードした場合、ギャラリーを簡単に投稿内に挿入するための[ gallery] (半角スペースは取り除く)というショートコードを用意しました。これを使うと、すべての画像のサムネールとキャプション、個別画像ページ(コメントがつけられる)へのリンクを表示できます。僕自身のブログでも、この機能を使って今までに1,200枚以上の写真を23のギャラリーにアップロードしています。ショートコードにはオプションもありますので、こちらのドキュメンテーション(英語)をご覧下さい。

開発者向け機能

それではギークな話題に入りましょう。ここまでで挙げたような機能の追加にはわくわくしていますが、各機能には他の開発者がこれらを拡張できる可能性、つまり API も含まれています(その中でも特に優れた拡張機能は、将来 WordPress に統合されるかもしれません)。

salt を使ったパスワードの暗号化phpass ライブラリを使用し、すべてのパスワードを salt を使って暗号化してからデータベースに保存することで強度を向上しました。これにより、ブルートフォースアタックは実用的でなくなります。mod_auth_mysql のようなものをお使いであれば、レガシー MD5 ハッシュを引き続き利用できるプラグインを作成していますのでご利用ください(このハッシュ化はプラグインでの完全な上書きが可能です)。ユーザーのパスワードは次回のログイン時に自動的により強力なパスワードに更新されます。

安全な Cookie — Cookie はこちらの PDF で説明されているプロトコルをもとに暗号化されるようになりました。 これは user name|expiration time|HMAC( user name|expiration time, k) のような形式で、k = HMAC(user name|expiration time, sk)sk は wp-config.php ファイルで定義した秘密鍵となっています。

タクソノミーと URL を簡単に作成 — これは例を使って説明するのが一番でしょう。いくつかの引数を使い、register_taxonomy()を呼び出す事ができます。例えば “people” タクソノミーを登録します。画像を編集する際、タグのような記入欄に、その値として画像に映っている人の名前(例:Firstname Lastname)を入れます。これらの画像は、/person/firstname-lastname/というURLでアクセスできるようになります。これらすべてを行うには、関数をひとつ呼び出すだけです。

インラインドキュメンテーション — WordPress に新しく追加されたコードの多くには、関数や引数を解説するインラインドキュメンテーションが含まれています。

データベースの最適化 — 今回のリリースではテーブルのレイアウトは変更していません。これは、プラグインの多くが新バージョンでも問題なく使える理由のひとつです。現在270万のブログを有する WordPress.com で発見したボトルネックをもとに、インデックスをいくつか追加し、デフォルトフィールドをもっと柔軟にしました。アプリケーション側では違いが分かりませんが、データベース側で少し速度が向上しています。

$wpdb->prepare() — WordPress内のほぼすべての SQL は前もって準備されるようになり、同様の関数がプラグインでも利用できるようになりました。これにより、基本的な SQL エスケープ処理に関する問題を回避できるでしょう。

メディアボタン — 本文記入欄上のメディア追加ボタンは拡張可能です。たとえば「Google マップを追加」ボタンを追加したり、既存のボタンを上書きしたりすることもできます。

ショートコード API — 新しいギャラリー機能は、ショートコード APIを使っています。ショートコードは角括弧で囲んだ文字列で、コード実行時にもっと面白い他のものに魔法のごとく形を変える事ができます。複雑な HTML や埋め込みコードの代わりに、短くて簡単なテキストのショートコード使えば、、投稿者は記事内にあるコードを崩してしまわないか心配しなくてすむようになります。ショートコード API の完全なドキュメンテーションはこちらです

2.5 に思ったより時間がかかった理由が、これで分かっていただけたでしょうか (^ ^)

アップグレードに関する注意

基本的なアップグレードの方法は、他のバージョンの時と変わりません。確認しなくてはいけない点でいちばん重要なのは、プラグインです。例えばほとんどの機能は動作するのにアップロード機能だけがおかしい、というのであれば、対応バージョンでないプラグインが挿入するJavaScriptのエラーのせいかもしれません。

何かおかしな事が起きているようだったら、以下の方法が一番安全です。まずプラグインをすべて無効化し、(プラグインの無効化を一度に行えるボタンを追加しています)ひとつずつ有効化していきます。ひとつ有効化するごとに、問題が起きているかどうかをチェックします。テスト中、この方法でほぼすべてのプラグインに関する問題を解消する事ができました。また、この方法でチェックすることで、どの作者がプラグインを更新する必要があるのか、きちんと更新していてあなたのブログでほめてあげるべき作者は誰かが分かります!

新しいアップロードおよびプラグインアップデート機能についてひとこと。 ぎりぎり対応しているようなホスト環境(例: 1.5以前の Lighttpd、かなり手を入れた mod_security ルール)などではこれらはうまく動かないかもしれません。スクリーンショットで見たように動かないものがあれば、干渉しているものに心当たりがないかサーバー管理者に聞いてみてください。サーバー管理者の皆さん、もしお使いの環境で特別なコードや設定が必要な場合、wp-testers メーリングリスト(英語)にぜひ参加し、投稿してください。次回のアップデートで考慮します<!–フォーラム修復待ち(訳注: 日本語でサーバー設定について投稿されたい方はフォーラムへどうぞ。)–>。
2.5 で役に立つヒントを教えましょう。管理画面で編集したい内容の名前(例えば投稿タイトルやユーザー名)をクリックする事で、その内容の編集を開始する事ができます。

コミュニティの成長

「成長」というより、「熱狂的支持」と言った方がいいかもしれません。いつもダウンロード数などが話題になりますが(ちなみにこの記事を書いている時点で、2.3 系のブランチは全世界で192万回ダウンロードされています)、今回はもっと興味深い別の情報についてお話ししましょう。

2.3.0 以来、1200回以上のコミットが行われ、90人以上の方がクレジットされています。これはコアコード(プラグインは含みません)に対し、実際に採用されるほどの高い水準のコードを書いて貢献した人たちが最低でも90人以上いるということです。こんなにたくさんいたとは私も知りませんでした。

コア・コミットチーム以外にも、多大な協力をしてくれた方々がいます。クレジットおよびチケット数の多い順にご紹介します。mdawaffe (Michael Adams)azaozz (Andrew Ozz)nbachiyski (Nikolay Bachiyski)andy (Andy Skelton)iammattthomas (Matt Thomas)tellyworth (Alex Shiels)josephscott (Joseph Scott)lloydbudd (Lloyd Budd)DD32 (Dion)filosofo (Austin Matzko)hansengel (Hans Engel)pishmishy、ffemtcj、Viper007Bondionfish (Benedict Eastaugh)jhodgdon (Jennifer Hodgdon)Otto42thee17 (Charles E. Free-Melvin), and xknownです。また、ドキュメンテーション関連で手伝ってくれた MichaelH と Lorelle に、サポート関連で手伝ってくれた moshu、Kafkaesqui、whooami、MichaelH、Otto42、jeremyclark13にも感謝します!

2.5 ブランチは、マイケル・ブレッカーへの尊敬の意をこめて、「Brecker」と名付けました。彼は並外れた才能を持ち、様々なスタイルを難なくミックスすることができたサックス演奏者でした。彼は昨年亡くなるまで、新しい実験や自分自身の限界への挑戦をし続けました。

新しい WordPress.org サイト

これだけやってもまだ物足りず、私たちは「たっぷりあった」暇な時間を使って、WordPress.org のサイトを新しいダッシュボード画面のデザインと合わせてリニューアルする事に決めました。また、ちょっと古くなってきていて、愛情ある手直しが必要だったサイト内の部分をいくつかを整えたりもしました。Codex などは数日間古いデザインのままかも知れませんが、もう少しお待ちください(訳注: 日本語フォーラムはリニューアルされましたが、サイトはまだです)。

次のステップ

いままでの WordPress にリリースでもそうであったように、ご紹介した機能が完璧だとか世界中のどんなソフトよりも最高だと言い切るつもりはありません。しかし、これらはコミュニティの皆さんによって、皆さんのために行われたのです。ひとつだけ約束できるとすれば、それは、私たちはこれからも皆さんの声をしっかり聞き、リリースの度にできる限り最高の改善をしていく、ということです。

2.5 は WordPress にとっての大きなマイルストーンとなります。その理由は、このバージョンにはユーザーから要望があった機能をいくつも含んでいるからというわけではなく、これによって私たちがブログを始めた日と変わらず、今でもブログに対して熱い想いを抱いている事を改めて確認することができたからです。私たちのコミュニティは、今までの栄光に満足するには気が荒すぎます。「ブログはもう終わった」なんて言う業界の専門家の意見とは正反対で、ブログは終焉とはほど遠く、すべての改善点は私たちの関心をさらに刺激してくれます。そして、これからもっともっと多くのことが起こるでしょう。

WordPress に投稿文字数制限がなくて良かったと思います。もしあったら、これはきっと文字数オーバーしていたでしょう!もしここまで読んでくれたなら、あなたの今日という日をこうやって私たちと一緒に過ごしてくれてほんとにありがとう。この新バージョンの WordPress が、あなたが大好きなことを実行するための手助けになれることを心から祈っています。

WordPress 2.5」への21件のフィードバック

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